映像と日常と~estwald2002のブログ

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映画「閃光少女 Our Shining Days」感想

  • 2017年、中国・香港
  • 監督:ワン・ラン
  • 主な登場人物:
    チェン・ジン(シュー・ルー)…音楽高校の伝統音楽部で学ぶ2年生の女の子。「楊琴」というバチで弦を叩く楽器を弾く。夢見がちで直情径行、芯が強い。ワン先輩に一目惚れしてしまう。
    ・リ・ヨウ(ポン・ユーチャン)…ジンといつも一緒にいる、大唐鼓(大太鼓)専門の男の子。何かとジンの力になる。
    ・ワン(ルオ・ミンチエ)…西洋音楽部の3年生。卓越したピアノの腕前で留学を目前に控えている。
    ・シャオメイ(リュー・イョンシー)…伝統音楽部の3年生。2次元(アニメ・コミック・ゲーム)を愛し、動画サイトでは「千指様」とあがめられている古箏の弾き手。冷静な性格。古典に詳しい。
    ・ベイベイ、ターター…シャオメイのルームメイト。ロリータコスプレがトレードマーク。それぞれ阮咸(げんかん)と琵琶を弾く。
    ・サクラ…シャオメイのルームメイト。過去にいじめられた経験から、一言もしゃべらず、いつもフードをかぶっている。二胡を弾く。
    ・教育局領導(イーソン・チャン)…学校を視察しに訪れた教育局の局長。
  • あらすじ:

    西洋音楽部と伝統音楽部との間で何かと小競り合いが絶えない音楽高校。学校側は西洋音楽部びいきで、伝統音楽部の入り口には鉄格子が付けられてしまった。ひょんなことでジンはピアノを弾くワン先輩に一目惚れし、告白するが、あえなく玉砕。しかし楊琴をバカにした彼を見返すために、シャオメイたちを仲間に引き入れてバンド「2.5次元」を組む。彼女らの演奏は次第にネット上で若者たちの評判を呼ぶが、ワン先輩にまたもこっぴどく振られたことで、ジンは楊琴をやめる決意をする。ところがそんな時、伝統音楽部への新規入学生募集を中止するという学校の決定が言い渡される。これを阻止しようとするジン、ヨウ、シャオメイをはじめとする伝統音楽部の学生らと、伝統音楽を見下す西洋音楽部との音楽対決が始まった…!

  • 感想:

    日本映画「のだめカンタービレ」や「帝一の國」を彷彿とさせる学園コメディ映画である。さげすまれて来た伝統音楽部の復興を目指す学生たちの活躍と、それに混じって時折淡い恋模様が描かれていく。廊下を挟んで伝統音楽部と西洋音楽部とが音楽対決するところは見ものである。西洋音楽であるリムスキー=コルサコフ作曲「熊蜂の飛行」の演奏で伝統音楽部が西洋音楽部に勝ってしまうのは面白かった。それを聴いていた視察中の教育局領導は「素晴らしい、鉄格子は撤去しなさい」と学部長に指示する。そして国家行事の「こども音楽会」にて学校側が宣伝目的で西洋音楽部に演奏の場を持たせた際に、西洋音楽部の学生たちの協力で伝統音楽部がサプライズ演奏をし、観客の親子連れとおたく達に拍手喝采されるのである。仲直りをするジンとワン先輩。ヨウはジンに淡い恋心を打ち明けるが、ジンにはまだまだ届かない様子…。明けて新学期、伝統音楽・西洋音楽を問わず多くの新入生(中には教育局領導の娘も混じっている)が校門をくぐって来るところで物語は終わる。観ていて一日本人の私が目を惹かれたのは何と言っても、本物の日本アニメのグッズやポスターが数多く登場したり、日本のコミケと全く同じような二次元を愛好する集会が登場するところだった。日本と同じおたく文化が中国・香港にも存在するのだな、とうれしくなった。ハートマークや桜の花びらをCGで描いたり、ジンやヨウをコミカルにアニメ化していたりして、映像的にもとても凝っていて楽しい。「2.5次元」や彼女らのソロの演奏は日本の「ニコニコ動画」そっくりの動画サイトで若者たちに受け入れられていた。中国語のコメントが読めればもっと楽しめるだろうに、と時々顔文字の混じるスマホ画面を見て思った。エンドクレジットでは、NG集と、日本の歌手中島美嘉の中国語の歌が流れる。そしてBGMはポップスやロック。これほど耳が楽しくなる映画もそうないだろう。

    この作品は、若手の育成と中小規模の映画の活性化を目指す第20回(2017年)上海国際映画祭メディア大奨(大賞)において、最優秀作品賞、新人監督賞、新人女優賞、助演女優賞脚本賞を受賞した。


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