映像と日常と~estwald2002のブログ

主に映像作品の感想文を書いていきます

アニメ映画「かがみの孤城」のプレゼントが当選した

昨年12月に公開されたアニメ映画「かがみの孤城」の、第5週配布ミニ色紙が松竹から贈られてきました。
すっかり忘れていたけど、たしか公式サイトのアンケート?だったかな、で申し込んで抽選で当たったものです。


2018年「本屋大賞」を受賞した、辻村深月氏の小説をもとに、才気あふれるスタジオA-1 Picturesが製作した映画です。

これ、何を書いてもネタバレになってしまう作品なので、これから配信や円盤で見ようとする方のために、あえてストーリーには踏み込まずに書きますね。(ひょっとしたら、2度見ようと思う人が少ないかも、と思える、そんなタネ明かしが終盤にあるんです。)

安西こころは、不登校の中学生。
「心の学校」別名「スクール」に行ってみるも、心は晴れません。

そんなある日、突然部屋の姿見が光り、中に引き込まれたこころは、見たこともない絶海の孤島にある中世風の孤城に飛ばされます。

こころを出迎えたのは、10歳くらいの、オオカミのお面をかぶって顔を隠している少女。
そして、同じく不登校の同い年くらいの少年少女が、全員で7人。

「この城のどこかに隠されている『鍵』を見つければ、何でも願い事がかなう。ただし、午後5時を過ぎてもこの城から鏡を抜けて自分の部屋に戻らないと、恐ろしいオオカミに食われるぞ」とオオカミお面の少女に言われます。

はたして、この城はどこなのか、鍵はどこにあるのか、みんなの願いはかなうのか、オオカミお面の少女は何者なのか…。

小説はかなり以前に読んでいて、とてもいいものだと思いました。

アニメもていねいに作られていて、感心しました。


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なれそめはディスコミュニケーション

お題「夫婦(カップル)の馴れ初めを教えて下さい。参考にしますので(笑)」

久しぶりにブログを書いてみる。

僕の妻と初めて会ったのは、2000年11月。

彼女が全国盲ろう者協会から借りていたパソコンがなかなかインターネット回線につながらないから、って、彼女のやってる手話サークルの生徒だった母から「あんた分かるんならちょっと行きなさい」と言われたのがきっかけだった。

盲ろう者」とは、目と耳の両方に障害がある人である。例えば、ヘレン・ケラー
全国盲ろう者協会は、登録商標で「日本のヘレン・ケラーを支援する」という文言を使っている。

弱視か、全盲か。難聴か、全ろうか。
組み合わせで4つの障害程度の部類に分かれるが、彼女は弱視全ろうで、音は全く聞こえない。目もよく見えない(進行性の網膜の病気)。当時はかろうじてマジックでチラシの裏に書いた文字が読める程度だった。(今はほとんど見えない。)
見たら、パソコンディスプレイは、WindowsXPの「ハイコントラスト 特大のフォント」にしていた。まぶしくないから黒い背景がいいらしい。

盲ろう者と会うのなんて初めてだったので、どうやって話せばいいのか、全然見当もつかない。
「手のひらに文字を書けば分かります」と言われたので、僕は覚えてないが、ボールペンで書こうとしたらしい。人差し指で書けよ、痛いだろう…。

何度か彼女の家に通っているうちに、何とかダイヤルアップ回線がつながるようになった。

ある日、帰宅した直後に彼女からFAXが届いた。

『かきさん、今日もありがとうございました。ところで、かきさんは忘れ物をしましたよ。何か分かりますか?』

…??? 何だっけ…。『何でしたっけ、分かりません』

『えーっ! 分からないんですか? これですよー!』と書かれた下には、マジックで書かれたジャケットの大きな絵が描いてあった。

『えっと、私の家は引っ越しの準備の最中なので、かきさんのジャケットも段ボールに入れて新しい家に送りますね。冗談、冗談です!』

…なんやこの子、しゃべれないから暗い子かと思ってたら、めちゃ面白いやんけ…。

その直後、クリスマスのデートを初めてカラオケBOXでやった。

告白したのは、年が明けて2001年の春。

親が折れて結婚にこぎ着けたのは、2005年6月であった。

どこに出会いがあるものか、人生分からないもんだ…。
もしエディオンが回線をつなげていたら…。母が彼女の生徒でなかったら…。

もう18年も前の事なんで、そんな出会いがなかったらどうなってたか、って、全然想像がつかないですね。

「普通でない」ことを恐れなかった孤高の天才の物語~映画「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」

●あらすじ:

1952年。ケンブリッジ大学の数学教授チューリングの自宅に泥棒が入った。チューリングの態度に不審なものを感じたノック刑事は彼の裏を取ろうとするが、第二次世界大戦中の彼の軍歴は一切残されていなかった。ノックは取り調べ室でチューリングと向かい合う…。

1939年、ナチス・ドイツと戦争状態に入ったイギリスは、若き天才数学者チューリングほか数名を集め、ドイツが誇る強固な暗号「エニグマ」を解読する極秘プロジェクトに従わせた。仲間と打ち解けようとせず、一人で解読マシンを開発しようとするチューリングに、周囲は敵意すら見せる。しかし、公募で招き入れた女性ジョーンの理解と助力により、仲間内の溝は埋まる。難攻不落かと思われたエニグマは、ふとしたきっかけでついに解読できた。しかし…。

 

●感想:

「コンピューターの父」とも呼ばれるアラン・チューリングを主人公にし、一部脚色を加えた映画である。人力で計算すると解読に2000万年かかるエニグマギリシャ語で「なぞなぞ」の意味)。これを一瞬で解くマシンの開発に、チューリングは没頭した。人の言葉の裏が読めない彼は当初チームで孤立するが、自分のマシンに絶対の自信を持っていたこととジョーンからの親切な助言もあって、チームは次第に彼のマシン開発に集中するようになる。海軍中佐に言い渡された期限ぎりぎりでの解読成功は、スリリングで爽快だった。しかし、解読に成功しても直ちに軍に報告するわけにはいかなかった。英米の船を狙うドイツの潜水艦Uボートをもし突然空襲で魔法のように沈めてしまったら、エニグマが破られたことを相手に悟られてしまうからである。もう一人の上官で情報部MI6のエージェント、ミンギスをチューリングは頼る。エニグマ解読成功は自国にも他国にも秘密にし、マシンから得られたドイツ軍の情報は統計的に処理して、味方のどこを犠牲にするか救うかを選択し、戦況を有利に導くこと。そのためのニセ情報を流して欲しい、と。ミンギスは言う、「私はこんなことはめったに言わないが、君は私の期待通りの男だ」。この第2のプロジェクトには「ウルトラ」という名が付けられ、MI6が作った虚実入り混じった情報が内外に意図的に流され、ドイツに占領された諸外国の解放や、歴史的な「ノルマンディー上陸作戦」の成功を導いた。のちの歴史家の考察では、チューリングの働きは、第二次世界大戦終結を2年以上早め、1400万人の命を救った、とみられている。しかし「義理人情を重んじる」日本人の一人としては、こんな手を血に染めるような諜報活動はとてもじゃないが出来ないな、と思った。さすが一時は世界の四分の一を支配した大英帝国である。マシンの名は「クリストファー」。チューリングが寄宿学校生活をしていた頃の唯一の友人、いや初恋の相手の名前である。実はチューリングは同性愛者で、当時の英国では法律により投獄されるかホルモン投与による治療を受けるしか生きる道はなかった。戦後はクリストファーの改良に没頭していたチューリング。1952年、買った男娼が自宅に泥棒に入ったことで、彼の性的嗜好が警察に明るみに出てしまう。担当したノック刑事は、極秘であるエニグマとウルトラの話を聞かされ、絶句する。チューリングは英雄か、犯罪者か。わいせつ罪で逮捕された彼を報じる新聞記事に向けるノックの視線は複雑であった。チューリングはクリストファーとい続けられるためにホルモン投与を受ける方を選び、1954年に41歳で自殺した。エニグマ解読プロジェクトの事実が英国政府から公にされたのは、戦争終結から実に50年以上も経ってからのことであり、エリザベス女王は2013年、チューリングに死後恩赦を与え彼の業績を称えた。同性愛を罪としていた法律は1967年まで続き、犯罪者として処分された国民はのべ4万9000人に及んだという。近年「キャロル」(2015年)や「ムーンライト」(2017年)など、同性愛を肯定的に扱った映画が評価されている。「誰も予想さえしなかった人物が、誰も想像しなかった偉業を成し遂げることだってある」。若くして亡くなったクリストファー少年の言葉が、作中で3度繰り返される。対人関係を築くのが不得手で同性愛者であるという秘密も抱えていたチューリングに限らず、「普通でない」ことを恐れず自由に生きられる社会が発展するといいと思う。

なお、「イミテーション・ゲーム」とは現在「チューリング・テスト」として知られるもので、「審判者が対象に向かっていくつかの質問をし、返ってきた答えが人間ともマシンとも判断できなければ、その対象は人間である」という思考実験である。

脚本を担当したグレアム・ムーアは、第87回(2015年)アカデミー賞で脚色賞を受賞した。「WIRED」誌の記事によると、ムーアはティーンエイジャーの頃からチューリングに関する事柄に取りつかれるようになり、この作品が映画化されると決まった際は、無償で脚本を書くと申し出たそうである。

 

2014年、イギリス・アメリカ作品
監督:モルテン・ティルドゥム
主演:ベネディクト・カンバーバッチキーラ・ナイトレイマシュー・グードマーク・ストロング、アレン・リーチ、チャールズ・ダンスロリー・キニア、アレックス・ロウザー


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題材は理想的だったが映画としては…?半ルポ映画「Winny」

※この記事は、公開直後の映画のネタバレを含みます。※

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●あらすじ(映画.comから引用):
ファイル共有ソフトWinny」の開発者が逮捕され、著作権法違反ほう助の罪に問われた裁判で無罪を勝ち取った一連の事件を、東出昌大主演、「ぜんぶ、ボクのせい」の松本優作監督のメガホンで映画化。
2002年、データのやりとりが簡単にできるファイル共有ソフトWinny」を開発した金子勇は、その試用版をインターネットの巨大掲示板2ちゃんねる」に公開する。公開後、瞬く間にシェアを伸ばすが、その裏では大量の映画やゲーム、音楽などが違法アップロードされ、次第に社会問題へ発展していく。違法コピーした者たちが逮捕される中、開発者の金子も著作権法違反ほう助の容疑で2004年に逮捕されてしまう。金子の弁護を引き受けることとなった弁護士・壇俊光は、金子と共に警察の逮捕の不当性を裁判で主張するが、第一審では有罪判決を下されてしまい……。
金子役を東出、壇弁護士役を三浦貴大がそれぞれ演じるほか、吉岡秀隆吹越満らが脇を固める。

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当時実際にWinnyを使っていたし、弁護団へ寄付もしたことがあるので、どんな出来なのか半分不安に思いつつも見に行った。

16:25開演、広島バルト11シアター6。
(余談だが、隣のシアター5では「トップガン マーヴェリック」のリバイバル上映をしていた。せっかくのMX4Dのシアター6だからこっちでやればいいのに、と思った。)

観客は25人ほど。たいがいは壮年男性だったが、ミニスカートを履いた若い女性や杖をついた高齢女性もいたのは意外だった。東出昌大めあてだろうか??

登場人物の役名は実名ばかり。これは半分はWinny裁判のルポルタージュであり、半分は金子勇という人物の一生を描いた映画である。

あまり俳優には詳しくないので、金子勇氏役の東出昌大が「寄生獣」の島田だったことにしばらく気付かなかった。小太りな金子氏を演じるにあたって体重を18kgも増量したとのこと。かなりの熱の入れようだ。

エンドロールに重なって流された、無罪確定した金子氏へのニコニコ動画のインタビュー映像が、東出がそれまで演じていた金子氏とシームレスにつながって見えた。それくらい東出の演技力は大したものだった。

内容としては、法廷闘争を主にしたもので、Winnyとその暴露ウイルスによる社会的影響に関しては、さほど重点が置かれていない。金子勇という、天才プログラマーかつ世間知らずで子供のような人物、そして彼を支えた壇俊光弁護士をいかにドラマチックに再現するか、に徹したものであった。

満天の星空に、プログラミングに、ビル街に沈む夕日に、低空をロールする飛行機に目を輝かせる金子氏。

茶店で、メロンソーダのアイスを頬張りながら無邪気に「捜査官が作った誓約書をそのまま書き写しました、後で訂正すれば済むと思ってたので」と弁護士に明かして彼をがっかりさせる金子氏。

彼は正に少年の心を持つ、悪く言えばプログラミング以外にはほぼ能のない子供のような男だった。

 

映画は、罰金150万円の一審有罪を言い渡されても、「まだ続きがあるじゃないですか」と晴れやかな金子氏の笑顔ののち、唐突に7年後の金子氏の葬儀場に場面転換する。


結局、京都府警サイバー犯罪捜査部や「その上にいるもの」がどういう意図で金子氏を著作権法違反ほう助の疑いで逮捕したのか(著作権法違反は本来それを犯され損害を受けた当事者の親告罪である)、なぜ何としても金子氏を有罪にしたがっていたのか、それが謎のままで物足りなかった。

「『出る杭は打たれる』と言うが、杭を打つには杭を支える人、槌で打つ人、そして指示を出す人がいる…」。これは弁護団のひとりであったベテラン、秋田弁護士の作中のセリフである。そこを具体的に見たかったな…。


壇氏をはじめとする弁護団と金子氏との交流や、法廷でのやり取りを想定して練習しながらのシーンが実際の丁々発止と重なる部分はよくできていて面白くはあったが、さらにその後の、高裁と最高裁で無罪判決を勝ち取ったくだりも欲しかった。「ルポルタージュ作品ではありません。そこは別に調べてください」、というのなら、少々残念な気もする。

Winnyによる度重なる極秘情報流出」の原因は、Winnyのせいというよりも暴露ウイルスによるものであるというのが正確なのだが、それを「これじゃWinnyが悪ってことになるじゃないですか!」との壇氏のセリフひとつで終わらせられたのは不親切だ。
Winnyを使っていたもの達にとっては常識であっても、背景をまったく知らない観客にはそれが通じていたのか、あやしいところだ。


また、愛媛県警の裏金作りを勇気を出して告発した仙波(せんば)元巡査部長は、それを全面否定されたし、Winnyによって県警の内部資料が流出した後にも、何者かに脅迫すら受けていた。
Winnyに無関係ではないにしろ、彼の人生もドラマチックで波乱であり、その後が描かれなかったのも尻切れトンボだと感じる。


私が毎月980円も課金して楽しんでいる音楽配信サイトSpotifyは、Winnyと同じくP2P技術を利用している。
また、私が日々適当なことをつぶやいている「Mastodon」は、Twitterのように中央サーバーを持っているわけではない「分散SNS」である。(開発者のドイツ人Eugen Rochkoは、Mastodonを23歳の時に発表している…。)
分散SNSの技術やP2P技術の詳細は、技術者ではない私には分からない。(2005年にAmazonで初めて購入した物品、金子勇著「Winnyの技術」は、18年経った今でもちんぷんかんぷんだ。)

結局のところ、映画の魅力的題材になるのは、先端技術ではなく、人物、たとえば「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」(ベネディクト・カンバーバッチ主演)のアラン・チューリングのような特異な存在なのであろう。
Facebookを創業したザッカーバーグを扱った映画「ソーシャルネットワーク」は未見なので、この勢いで見てみたい。


それにしても、NEC PC-8001実機から「マイコン」「月刊アスキー」等の実在した資料まで、よくも集めて作ったなと感心はした。


Winnyに関する話は、2004年に金子氏逮捕直後に開かれたオフ会でもしている。

Winny作者逮捕について考える広島オフ

(ここで出された意見全てを私が述べたわけではないが)

 


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「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」は家族愛の映画であったが…今後は?

封切り2日目にMX4D 3D上映を見て、いよいよIMAX 3D版を見に行った「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」。

つい最近まで知らなかったんですが、「アバター」ってキャメロン監督の中では全5部作の構想なんですね。僕はてっきり「あんなにきれいに終わった映画の続編だなんて…駄作と化すんじゃ?」と思い込んでいました。
だから、今回1度目を見終った時「えっ?大佐生き残るの???」と本当にびっくりしましたね。

それはともかく、今回は主人公のジェイクの父親ぶりと、彼の妻となったネイティリの母親としての狂気に近い愛情はすごかった。「軍曹ジェイク」、ちょっとやり過ぎかも。

そして、大佐。
スパイダーをつい守ってしまう心理。
前作では見られなかった、人間味のあふれるシーンでしたね。
ネイティリも、以前からスパイダーは仲間ではないと感じていたものの、娘を守るために彼を人質に取るとは…。
今後は大佐はスパイダーとどう向き合うのか。
スパイダーも、ジェイクの家族の一員として生きる反面、大佐との絆をどのように深めるのか。

先が楽しみです。